トピックス

TOPICS

金利は、どこから効くのか ― Higher for Longerと信用市場の二極化 ―

GCI Memo from the Founder No.006

金利は、どこから効くのか

―― Higher for Longerと信用市場の二極化 ――

2026年9月
株式会社GCIアセット・マネジメント
山内 英貴

米国の10年国債利回りが、再び5%を超えています。

9月25日時点で10年国債は5.17%、30年国債は5.49%でした。通常、これほど金利が上昇すれば、株式市場にも大きな負担がかかると考えます。しかし今のところ、そうはなっていません。同じ週にS&P500とNasdaqは上昇しました。米国経済も強く、9月の企業景況感は2021年以来の高水準となっています。

一方で、信用市場の一番下では、全く違うことが起きています。CCC格の社債利回りは15%前後まで上昇しています。私は、この組み合わせを興味深く見ています。

本稿も将来を予測するものではありません。いま起きている変化を記録し、数年後に読み返すための観察メモです。

「危機は起きないが、金利も下がらない」の次

先日のGCI Memo No.004で、米国の政府債務を巡る議論について、

「危機は起きないが、金利も下がらない」

という状態が、最も蓋然性の高いシナリオではないかと書きました。今のところ、その見方を変えていません。金融システム全体が危機に向かっているとは考えていません。企業利益は強く、株式市場も高値圏にあります。米国の実質経済も、少なくとも足元ではかなり力強い。しかし、高い金利が誰にも影響していないわけでもありません。むしろ最近見えてきたのは、金利の負担が均等には広がらないということです。

同じ金利でも、負担は違う

2020年から2021年にかけて、企業は非常に低い金利で大量の資金を調達しました。長期固定金利で資金を確保した企業にとって、その後Federal Reserveが金利を引き上げても、すぐに支払利息が増えるわけではありません。特に大手企業の多くは、豊富なcash flowを持ち、低い固定金利の負債を長期間確保しています。金融引締めの影響を、まだそれほど受けていません。

しかし、すべての企業が同じではありません。高いleverageを持ち、floating-rateで借り入れ、利益率が低く、数年ごとにrefinanceしなければならない企業は違います。借入金利が4%から6%へ上がるのと、8%から15%へ上がるのとでは、意味が全く異なります。

高い金利は、平均的に経済へ広がるのではなく、

最も弱いbalance sheetから順番に効いていく。

いま信用市場で起きていることは、その過程なのかもしれません。

2021~22年の借入が戻ってくる

ApolloのTorsten Slok氏は、現在の状況を“Higher for Longer Hits the Lowest Rated”と表現しています。特に注目されているのは、2021~22年に資金を調達した低格付け企業です。当時は資金が豊富で、金利も低かった。その資金の満期が近づき、これから借り換える必要があります。

しかし現在の金利は、当時とは全く違います。しかも負担が大きい企業の中には、Private Equity傘下の企業も少なくありません。従来なら、

「時間をかければ業績が改善する」

「次のrefinancingまでに企業価値が上がる」

という前提を置くことができました。金利が高止まりする世界では、時間そのものにコストがあります。待てば待つほど、利払いがcash flowを削ります。この点は、Private CreditやPrivate Equityを考えるうえでも重要だと思います。

株価指数は教えてくれない

興味深いのは、こうした信用ストレスが起きている一方で、S&P500やNasdaqが高値圏を維持していることです。矛盾ではありません。株価指数を大きく動かしている企業と、信用市場で苦しんでいる企業が違うからです。cashを大量に生み、低い金利で長期資金を確保している大型企業は、高金利にも耐えることができます。

一方、資金調達を繰り返さなければならない企業は、同じ経済の中にいても全く異なる環境にあります。したがって、

株価指数が強いことと、金融環境が緩いことは同じではありません。

言い換えれば、

Index resilience is not financing resilience.

この区別は、これから重要になるように思います。

DDIRとの関係

3月のBig Pictureでは、Debt-Driven Inflation Regimeの下で、名目GDPの成長が資産価格を支える一方、金利の不安定さが高いボラティリティを生む可能性を書きました。現在の市場は、その二つを同時に示しているようにも見えます。

経済は成長する。

企業利益も伸びる。

したがって株式市場は必ずしも下がらない。

しかしインフレが残り、政府債務も増え、AIやインフラへの巨額の資本需要が加われば、金利は以前のような低水準には戻らない。その結果、名目成長の恩恵を受ける企業と、高い資金調達コストに耐えられない企業の差が広がります。DDIRは、すべての資産価格が一緒に上昇する世界ではありません。むしろ、

名目成長が続くほど、資本配分の差が重要になる世界

なのかもしれません。

Private Assetsでは「平均」を見ない

この環境では、Private Creditを一つのasset classとして評価するだけでは不十分だと思います。重要なのは、その中身です。

どの年に融資したのか。

固定金利か変動金利か。

cash interestを利益で払えているか。

PIK interestが増えていないか。

満期を延長しているだけではないか。

企業価値の上昇ではなく、leverageによってreturnを作っていないか。

Private Equityについても同じです。

高金利が数年続けば、IRRよりもDPI、valuationよりも実際のcash realizationの重要性が増します。資産クラスの名前ではなく、cash flowがどこから生まれているかを見る必要があります。これは、本来の資産運用に戻るということでもあります。

この仮説をどう否定するか

この見方が正しいかどうかは、これから確認できます。

政策金利が高いままでも、CCC企業のrefinancingが問題なく進み、低格付けcredit spreadが縮小し、defaultやnon-accrualが減るのであれば、「高金利は弱い企業から効く」という見方は強すぎたことになります。逆に、現在はCCCに集中している問題がBB、Investment Grade、銀行融資へと広がるのであれば、別の判断が必要です。その場合は「二極化」ではなく、信用市場全体の問題になります。

もう一つ重要なのは、株式市場です。

大型株だけでなく中小型株にも上昇が広がり、利益成長が幅広い企業へ拡散するのであれば、現在の分断は解消に向かっていると判断できます。

観察を続けたいと思います。

参考・出所

U.S. Department of the Treasury, Daily Treasury Par Yield Curve Rates, September 25, 2026.
S&P Global, US flash PMI signals fastest growth for over five years in September, September 23, 2026.
Torsten Slok, Apollo, Higher for Longer Hits the Lowest Rated, September 25, 2026.
Apollo, Recent Rates Volatility: Risks and Opportunities in Credit, September 26, 2026.
GCI Asset Management, 債務危機は差し迫っているか ― 運用環境をめぐる論争の整理, GCI Memo from the Founder No.004, September 2, 2026.

×