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長期金利を、いま誰が決めているのか

GCI Memo from the Founder No.003

長期金利を、いま誰が決めているのか

2026 年8 月27 日
株式会社GCIアセット・マネジメント
山内 英貴

米国の長期金利をめぐる議論が、この数週間で少し性質を変えました。

きっかけは、8月中旬以降に米財務省がとった一連の動きです。30年債利回りが19年ぶりの水準まで上昇したことを受け、財務省は長期国債の買い戻しについて、1回あたりの上限を20億ドルから40億ドル以上へ引き上げると発表しました。ベッセント財務長官は、その翌日にはさらに上積みする可能性にも言及しています。加えて、1兆ドル近い財務省一般勘定を原資として用いる案も伝えられています。これに先立つ8月初旬には、日米が協調して円買い介入を実施しました。両国が共同で円を買う介入は、1998年以来のことです。

これらは一体のものとして読み解くことができます。長期債の発行を抑えて短期の国債で資金を賄う「ツイスト」であり、同時に、長期金利が経済の実態から離れて上昇した場合には当局が介入する用意があることを示す「プット」でもある。したがって債券自警団を過度に恐れる必要はない、という見立てです。10年債利回りは名目成長率との対比で特段に高い水準にあるわけではなく、直近の上昇の多くは実質金利の上昇によるものです。

注目したいのは、結論ではなく、安心の根拠がどこに置かれているかです。

当局に道具があることが安心の理由になる市場とは、価格が政策によって決まる市場です。

私たちは本年3月以降、DDIR(Debt-Driven Inflation Regime)という整理の枠組みを用いてきました。政府債務が大きくなるほど、金利と物価が財政の必要に従って決まりやすくなる、という構造仮説です。この数週間の動きは、その仮説が具体的な政策として現れた一例として読めるのではないかと考えています。

書き留めておきたい観察が三点あります。

一つ目は、円を支える側に米国が回ったことです。伝えられている理由の一つは、日本が自国通貨を守るために米国債を売却する事態を避けることでした。米国債の限界的な買い手が誰であるかは、市場が決める変数から、政策が管理する変数へと移りつつあります。

二つ目は、短期国債の新しい買い手として、ドル建てステーブルコインが想定されていることです。発行体は制度上、準備資産として短期国債を保有します。買い手層が制度設計によって作られようとしている、と言い換えることもできます。

三つ目は、その一方で物価が動いていないことです。7月の個人消費支出デフレーターは、総合3.7%、コア3.3%。いずれも6月から変わりませんでした。2%の目標を上回る状態が、5年以上続いています。この数字は9月の利上げを支持する材料になると考えられます。

ここに、この局面の性格が表れているように思います。金融政策の側では引き締めが議論され、財政の側では長期金利を抑える手が打たれている。同じ市場に、逆を向いた力が同時にかかっています。Fiscal Dominance(財政主導レジーム)という言葉が指しているのは、こうした状態です。

これは危機を示唆するものではありません。むしろ当面は、安定が保たれる可能性の方が高いのかもしれません。当局には手段があるというということを示しているからです。

私たちが考えているのは、その先のことです。政策によって抑えられた金利は、抑えられているという情報を含んでプライシングされています。そこから読み取れる将来の姿は、市場だけが価格を決めていた頃のものとは異なるかもしれません。

何が起きるかを当てにいくのではなく、価格がどのように決まっているのかを観察し続ける。それが、この局面における私たちの基本姿勢です。

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